2015/10/29

栃木県足利市の近代化遺産(その4)

ツアーの前日にもレンタサイクルを利用して市内を周ってきました。 本当の目的は足利市内にあるという遠藤新が設計した納骨堂だったのですが、見つけることが出来ませんでした。 本当はここで紹介したかったのですが…。

足利市内には他にも近代建築や近代化遺産がいくつかあるので紹介していきます。

JR両毛線 足利駅舎  昭和8年
何度も来ている足利駅なのですが、色が塗り替えられていました。 なにか雰囲気が変わったなと思っていたのですが、家に帰って過去の写真と見比べて、変わったのが色だけではないことに気付きました。
 まず第一に特徴的だった赤い屋根瓦がなくなっています。これだけでちょっと安っぽく見えてしましまいます。 あと庇の上にあったステンドグラスが普通のガラス窓になっていました。 配色も前のほうが良かったなぁ。
2014年9月撮影
なくなっていたステンドグラス。
2014年9月撮影

渡良瀬橋  昭和9年
森高千里さんの曲で有名な『渡良瀬橋』。6連のワーレントラスなのですが、注目すべきは石橋脚です。この橋脚は明治35年に架けられた初代 渡良瀬橋のものだそうです。
 「この街並みが今日も暮れてゆきます」

中橋  昭和11年
個人的には足利市といえば中橋です。 力強い印象の3連のブレーストリブ・アーチです。この日朝は小雨が降っていたのですが、夕方には見事に晴れてくれました。
 「夕日がきれいな街」
 夜間はライトアップされているので昼間とはまた違った印象を受けます。

足利学校遺蹟図書館  大正4年
 足利学校伝来の書籍の保存をするために建てられました。

松村写真館  大正13年

 ・東武伊勢崎線 福居駅舎  明治40年
株式会社トチセンのすぐ近くです。 バスの中からちらっと見た限りこの頃と変わっていないようでした。
2007年5月撮影

須花隧道(初代) 明治22年
足利市と佐野市の間にある須花峠につくられた素掘りのトンネルです。
2014年9月撮影

須花隧道(二代目) 大正6年
栃木県で唯一の煉瓦トンネルです。 心霊スポットとして有名らしいですが、僕はそういうの全く気にしません。 初代と共に土木学会選奨土木遺産に認定されています。

釣地橋  大正6年 《国登録有形文化財》
4連の石桁橋で、この先にある稲岡観音堂の参道の一部になっています。 使われている御影石は、地元で採れる「名草御影」と呼ばれるものです。
2007年5月撮影
参道らしく親柱と高欄は擬宝珠の形をしています。
2014年9月撮影
5✕4の計20枚の石板が使われています。 写真で見ると歪みが大きく頼りない感じですが、実際に渡ってみるとかなりしっかりした造りになっています。
2014年9月撮影


足利市を訪れたのは今回で5回めくらいになるでしょうか。 なぜかというと、日光や足尾銅山に行った時などは大間々町〜桐生市〜足利市とお決まりのコースになっているからです。 帰りが遅くなって宿が取れない時でも、足利に健康ランドがあるので仮眠が取れるのです(笑)

もうこれで足利市の探索は大体終わったと思っていたのですが、遠藤新の納骨堂の他にも近代建築がまだいくつかあるようなので、また健康ランドのムームーを着る日がくるかもしれません。
それと今回は時間がなかったのですが映画『君に届け』のロケ地めぐりもしてみたいところです。

おしまい。



2015/10/27

栃木県足利市の近代化遺産(その3)

次の目的地は株式会社トチセンです。 ここには大正初期に建てられた足利織物株式会社の煉瓦工場が残っています。
こちらでは社長さん自らが解説をしてくれたのですが、 なかなか面白い方で楽しい話をたくさん聞かせていただきました。
今までも映画やテレビのロケに使われてきたそうですが、2016年 春からのNHKの連続テレビ小説『とと姉ちゃん』のロケ地に決まっているそうです。
2007年撮影
 ・旧足利織物赤レンガ捺染工場  大正2〜8年 《国登録有形文化財》
6連ののこぎり屋根を持つ工場です。ここで使用されている煉瓦は、東京駅や赤坂離宮にも使われている、埼玉県深谷の日本煉瓦製造で造られたものです。壁面に黒い模様がついているのは、戦火から逃れるために施された迷彩模様です。

旧足利織物汽罐室  大正2〜5年  《国登録有形文化財》
ボイラー室は新旧3つの棟からなるのですが、一番古いのが手前にある北棟です。その隣の方形の建物は昭和16年に増築された中央棟です。 当初は2機づつ計4機のランカシャボイラーが設置されていました。
 中央棟に残されている2機のランカシャボイラー。こちらも登録有形文化財に指定されています。ランカシャとはイギリスの地名で、その州の紡績会社でこのボイラーが多く使用されたのが名前の由来だそうです。

旧足利織物赤レンガサラン工場  大正2〜8年 《国登録有形文化財》
東西に長く伸びる工場棟で、一部は2階建てになっています。
 中はガランとしていて現在は特に使用されていないみたいでした。 当時の写真が置いてありました。

元は織物工場だったわけですが、現在は化成品フィルムの染色や特殊加工を主な業務としています。 業態は変わっても過去からの資産を大事に受け継いでいく姿勢は大変素晴らしいと思います。とはいっても、経営が一番苦しい時期に、敷地の一部を売却して何とかしのいだそうですが(笑)

トチセンの見学を終えた後は、今回のツアーの最後の見学地に向かいます。

旧足利模範撚糸工場  明治36年  《国登録有形文化財》
現在はアンタレススポーツクラブとして利用されています。 模範撚糸工場は各地に造られていますが、現存するのはここだけです。 中を見学できるよう観光協会が交渉したのですが、ダメだったそうです。…残念。

ツアーはここでおしまいです。 今回のツアーはモニターツアーで試験的なものだったそうで、スタッフの方たちは時間調整になかなか手こずっているようでしたが、足利市駅には予定時刻通りに到着しました。 おみごと!


次回は渡良瀬橋と中橋、あとツアーで周らなかった近代化遺産や近代建築を紹介したいと思います。

続く。




2015/10/24

栃木県足利市の近代化遺産(その2)

浄水場の次は旧木村輸出織物工場へ向かいます。 途中、渡良瀬橋と中橋は社内からの見学となったのですが、この2つは前日に写真を撮ってきたので(そう、前のりしたのです)、後ほど紹介したいと思います。

旧木村輸出織物工場では工場棟、事務所棟、木村家主屋を見学するのですが、その前にお弁当タイムとなります。
 旧工場棟の中で昼食です。 前回は人の写っていない写真ばかり選んだので、ツアー感があまり感じられなかったと思いますが、こんな感じになっています。
 お弁当は結構良い物でした。 これで参加費1000円だと絶対に赤字だと思うのですが、大丈夫なのでしょうか。

旧木村輸出織物工場 工場棟  明治25年 《県指定文化財》
現在は助戸公民館ホールとしてりようされています。 外観は土蔵造りのような和風になっていますが、基礎は煉瓦造りで内部の小屋組は洋式のトラス構造になっています。

 ・旧木村輸出織物工場 事務所棟  明治44年 《県指定文化財》
現足利織物記念館。 イオニア式のオーダーや半円形のペディメントなどが外観の特徴になっています。

 ・旧木村家主屋 
工場棟に隣接した場所にあり、こちらも助戸公民館の施設として利用されています。 立派な近代和風建築なのですが、住みやすいようにいろいろと改修されていたので文化財指定は見送られたそうです。

 この旧木村輸出織物工場では昼食の後に、足利工業大学准教授の福島二郎先生のスライドを用いた講演などもあり、2時間余滞在しました。
そういえば前日にも写真を撮りに来たのですが、敷地内にテントが張ってあって何かの撮影をしているようでした。 かなり大掛かりな撮影に見えたので映画かドラマかもしれません。

続く。





2015/10/23

栃木県足利市の近代化遺産(その1)

先日、栃木県足利市の観光協会が主催する「近代化遺産バスツアー」というものに参加してきました。 参加費が1000円で昼食付きなのが良かったのか、なかなかの人気で、総勢80人で大型バス2台を貸し切ってのツアーでした。参加者のほとんどが市内のお年寄りで戸惑いましたが、普段入ることのできない所も見学できてテンションが上りました。

最初に訪れたのが緑町配水場でした。 今回ツアーに参加しようと思ったのも、ここを見たかったからです。

緑町配水場 水道山記念館  昭和5年 《国登録有形文化財》
配水場の事務室として使われていた建物です。 一番の特徴は昭和9年に昭和天皇が訪れた際の御座所を当時のままに保存していることです。
 内部のシャンデリアや照明は花をモチーフにした可愛らしいものでした。
 御座所はやはり調度品が豪華でした。

緑町配水場 配水池  昭和5年 《国登録有形文化財》
幅が約60m、奥行きが27mの鉄筋コンクリート造りの配水池で、中は3つの池に区切られています。
配水池の4隅にはアールデコ風の照明が立っています。
 両脇に階段が設けられた中央の水位計室。 「足」と書かれた市章が飾られています。
関係のない話ですが、この配水場は映画『君に届け』のロケ地として使われました。黒沼爽子と風早翔太が肝試しの後に夜景を見下ろす場面です。よーく観ていると背景に旧事務室も写っています。
 2人は映画の中でこの配水池の上に立って夜景を眺めるのですが、僕がそんなことをしたら間違いなく怒られるので、旧事務室の前から撮った市内の風景を。 逆光気味でわかりづらいですが、渡良瀬橋と中橋が見えます。

緑町配水場 接合井  昭和5年 《国登録有形文化財》
半円アーチの模様が付いたこの建物は、浄水場のポンプ室から送られてきた水を配水池へ中継するためのものです。

 続いてやって来たのは今福浄水場です。ここもいつも門の外から指をくわえながら眺めていた場所です。

今福浄水場 ポンプ室 昭和5年 《国登録有形文化財》
 直線と曲線の対比が美しい正面入口。入口の上にはやはり市章が掲げられています。
半地下構造になっている内部。 現役で稼働している7台のポンプが設置されています。渡良瀬川の近くに浄水場があるので、てっきりそこから取水しているのかと思っていたら、なんと足利市の水道はすべて地下水を汲み上げたものだそうです。
 入口の床はお洒落なタイル張り。

もうここまで見学できただけで個人的には十分なのですが、ツアーは9:00から16:30まであるのです。 午後の部も楽しみにしたいと思います。

続く。