2015/11/29

梵寿綱の建築・向台老人ホーム(その3)〜 東京都東大和市

続いて2階を見ていきます。

2階の廊下にもステンドグラスが並びます。さり気なく天井に舞っている蝶々が可愛いです。

廊下のドアからふと外を見たら壁面に絵が描かれていました。 「おっ、鍵がかかっていない」とドアを開けようとした瞬間にブザーが鳴り響いてしまいました。 ごめんなさい。お年寄りが勝手に外に出ないようにでしょうね。

 2階の食堂前のホールです。 この建物は居室やトイレなど扉が無い設計になっているので、このように椅子で通せんぼをしている箇所がいくつもあります。 立入禁止というわけではなく、ちょっとずらしてから通ります(笑)

 エレベーターの扉には他の梵寿綱建築でよく見かけるエッチングが施されています。

食堂の手前の介護教室という小部屋。廻り縁が手首に巻き付くという変わった装飾になっています。

屋上へ上がる階段の手すりと踏み板には貝が埋め込まれています。この踏み板のインレイはさり気なくて素敵です。

そして上を見上げるとここにもステンドグラスが。

 1階へ降りる途中の踊り場には太陽が杢目の変化を活かして表現されています。 建物全体のフローリングもこういった装飾や寄せ木などが随所に用いられていて、変化に富んだものでした。

この階段を下りると1階の事務室前に戻ってきます。

これで一通り見て周りましたが、浴室と食堂は今回は見学できませんでした。
最後に事務室の奥の部屋に飾ってある、篠山紀信さんに撮ってもらったという写真を見せていただきました(写真を撮ってくればよかった…)。

篠山紀信さんには負けるけど、じっくりと写真を撮ることが出来てとても楽しかったです。 ありがとうございました!

2015/11/27

梵寿綱の建築・向台老人ホーム(その2)〜 東京都東大和市

普段老人ホームに入ることなど全く無いので勝手がわからないのですが、とりあえず中に入ってみることにしました。

中に入った瞬間に自動ドアのステンドグラスに目を引かれます。

受付で見学が可能かどうか尋ねてみたところ、突然の訪問にも関わらず、職員の方に中を案内していただけることになりました。 居住者の方々が写らなければ自由に写真を撮って構わないそうです。

玄関の床には巨大な目の形をした木が埋め込まれています。 この老人ホームでは木材の質感を活かした装飾が多くありました。 他の梵寿綱の建物ではあまり見かけなかったのですが、やはりお年寄りの生活の場ということを意識したのでしょうか。

壁にはかわいいこて絵。淡路島のカリスマ左官職人と言われる久住章氏の手によるもの。

居室の並ぶ廊下の天井にはずらりとステンドグラスが並んでいます。

このステンドグラスは四季の様々なイベントがモチーフになっています。

霊安室にやって来ました。 2階までの吹き抜けになっていて、壁面はフレスコ画で覆われ、巨大な手のオブジェがその壁から突き出しています。

遺体を安置する台も手の形をしていますが、この日はなぜか大量の毛糸が置いてありました。

霊安室前の階段から2階に上がります。ここの階段も見どころの一つです。

2階の踊り場からは先程の霊安室が見下ろせます。


やはりというか、写真の枚数が多くなってしまったので3回に分けます。梵寿綱の建物はあらゆる所にカメラを向けたくなってしまい、いつももの凄い量の写真になってしまいます。 これでも一応厳選しているのです(笑)

続く。

梵寿綱の建築・向台老人ホーム(その1)〜 東京都東大和市

以前宣言した通り、東大和市にある「向台老人ホーム」に行ってきました。 こう見えて有言実行タイプなのです。

梵寿綱によって昭和60年に建てられたこの老人ホームは、「無量寿舞」という作品名が付けられています。 寿舞は住まいの当て字なので、永劫の住まいとでも理解すればよいのでしょうか。

まずは外観から見ていきます。 こちらは浴室の入っている棟です。相変わらず凄いインパクト! これを見て老人ホームだとは誰も思わないでしょう。

植木の根本には彫金のオブジェが。 梵寿綱の建築はこういった職人たちの手仕事によって彩られています。 一つ一つがアート作品と言ってもいいでしょう。

あえて目立つ位置に配された霊安室。 波打った壁面には細かな模様、ステンドグラスの入った窓やタイル装飾、彫刻などこちらもてんこ盛りです。

 半円形の棟は1階が事務所で2階が食堂になっています。有機的なデザインの窓枠と庇が美しいです。

縁取りの模様が入った壁面のタイル。

玄関前の広場も全面タイル張りになっています。

風向計?と思われる金属製のオブジェ。当初はあったけれど、危ないので撤去したオブジェもあるそうです。


 いよいよ中に入ってみます。

続く。

2015/11/15

第18回 千葉矯正展

今日は千葉刑務所で行われた矯正展に行ってきました。

朝早くに起床したのですが、昨日からの雨がまだ降り続いていて「行くのやめようかな」とゴロゴロしていたら、いつの間にか二度寝してしまいました。 11時頃に再び起きてふと空を見たら、晴れているではありませんか!
慌てて準備をして、何とか13時ちょっと前に到着しました。

みんな考えることは同じなようで続々と人が集まってきます。

千葉刑務所 正門  明治40年
千葉刑務所にある煉瓦造りの建物は当時の司法技師だった山下啓次郎により設計されました。 山下啓次郎は帝国大学では辰野金吾の生徒であり、伊東忠太の同級生だったそうです。

山下啓次郎は監獄専門の建築家として、千葉、金沢、奈良、長崎、鹿児島などの監獄を設計しました。 

 奈良監獄(奈良少年刑務所)とよく似たドーム型の屋根を持つ塔が左右に立っています。

千葉刑務所 本館  明治40年
同じ煉瓦造りであった房舎は建て替えられてしまいましたが、この本館は現役で使われています。

 今日は久々に晴れ男(自称)の力を発揮することが出来ました。 来週の3連休も晴れますように!


2015/11/11

京都市伏見区・南区の近代化遺産

中書島駅の南口を出ると、すぐに伏見港公園が見えてきます。 その伏見港公園を奥の方に進んでいくと、濠川が宇治川と合流する地点に水門と閘門が設けられています。

三栖閘門  昭和4年  《土木学会選奨土木遺産》
大阪と伏見の舟運が盛んだった昭和初期には、年間2万隻もの船がここを通過したそうです。 現在はその役目を終えているのですが、観光用に十石舟が運行しています。
 塔の先端にはアールデコ風の装飾が施されています。 こちらの下流側の塔は巻上機が撤去されていて展望台になっているのですが、現在は登ることが出来ないようでした。

三栖洗堰  大正14年
閘門の隣にある水門です。 濠川には琵琶湖疏水の水が流れ込んでいて、ここが琵琶湖疏水の終着点と言っても良いでしょう。 この地点で同じく琵琶湖から流れてきた宇治川と合流するのです。

近鉄京都線 澱川橋梁  昭和3年 《国登録有形文化財》
とにかく巨大なプラットトラス橋です。 164.59mという単純トラスとしては現在でも日本一のスパンを誇ります。 なんでも陸軍の演習の邪魔になるからということで橋脚を使用出来なかったとか。
 こちらは連続トラスですが、比較用の画像を。 澱川橋梁がいかに巨大かわかるでしょうか。
JR東海道本線 天竜川橋梁

竹田の火の見やぐら  大正12年  《国登録有形文化財》
竹田村消防組第二支部の装備品として建設され、現在地に移転されました。 鉄骨造としては初期のもので登録有形文化財に指定されています。

鳥羽大橋  昭和7年
6連の鉄筋コンクリートアーチ橋で、立派な橋詰と親柱が備わっています。以前はなかった歩道橋が上流側に設けられていて、ちょっと写真が撮りづらくなっていました。

最後に、今回は訪れなかったのですが過去に訪れた南区(西京区)の土木遺産を紹介します。

JR東海道本線 桂川橋梁 (上り内外線) 明治44年
12連のポニーワーレントラス橋です。 この写真では草に覆われていて見えないですが、橋脚は明治9年製の煉瓦橋脚が使われています。 この時は橋脚の事が頭になく、ちゃんとした写真が撮れていないので、また撮りに行こうと思います。
2006年8月撮影

・JR東海道本線 桂川橋梁(下り内外線) 昭和3年
こちらも12連のワーレントラス橋です。 以前にテレビで桂瓜を高校生が育てていた背後にちらっとこの橋が映って、思わず「あっ!」と言ってしまいました(笑)。
2006年8月撮影

 おしまい。